貴方の愛に捕らわれて
「初めてお前と出会った時の事、覚えてるか?
あの日、俺は殺伐とした毎日に胸の奥が疼いて、気分転換の為に砂浜を歩いてた。
そうしたら、何処からともなく綺麗な歌声が聞こえてきて、その声に惹かれてお前を見つけた。
お前の歌を聴いていると、不思議と胸の疼きが治まった。
次の日もお前の歌が聴きたくて、気が付けば、あの砂浜に足が向いてた。
ただ、お前はきっと現れないだろうと諦めていたがな」
『どうしてですか?』
自嘲気味に笑う猛さんが不思議で、腕の中でぽつりと呟く。
「ははっ。普通はビビるだろ?俺みたいな男がいれば」
確かに。初めて猛さんと出会った時は、ビックリして足早にその場を立ち去ったっけ。
でもそれは知らない男の人に驚いただけで、別に猛さんが怖かった訳じゃない。