貴方の愛に捕らわれて
固まる私の周りを、強面の男子生徒数十名がぐるりと取り囲む。
その中には3年生の相沢先輩や赤崎先輩、クラスメイトの堀田君の姿も見える。
堀田君なんて何時も遅刻して来るのに、どうして今日はこんなに早い時間に登校して来たんだろう。
ザワザワとしたざわめきの中、不意に耳に飛び込んできた会話に肩が跳ねた。
「なにあの地味女。ていうかアイツ誰?」
「なんで智也さんの車から、あんな地味女が降りてくる訳?
有り得ないんですけど」
「あれウチのジミーじゃね?何だアイツ。なんかやらかしたの?」
聞き覚えのある声に視線を向ければ、クラスメイトの姿が見えた。
男の人が怖くて、人との関わりを極力避けてきた私は、いつも目立たないよう、息を潜めていた。
そんな私のことを知っているのはクラスメイトぐらいだ。
違うな。クラスでも目立たない存在の私は、一部の人達にしか認識されていないのだろう。