貴方の愛に捕らわれて
兎に角、バックを返してもらわなきゃとは思うものの、怖すぎて返してとは言えない。
真っ青になって焦る私に、相沢先輩はバックを持ったまま声を掛ける。
「教室に行きましょうか」
すると校庭に溢れていた野次馬の人垣が割れ、校舎までの道が出来る。
相沢先輩に話し掛けるのは怖いけど、このままバックを持たせたままにするのはもっと怖い。
勇気を振り絞って震える声で『私のバック』と呟けば、「教室までお持ちします」と有り得ない返事が帰ってきた。
お持ちしますってどういう事!?
何でバックを返してくれないの?
泣きそうになりながら、縋るような思いで龍二さんを見れば、「いってらっしゃい」とキラキラの笑顔で手を振られる。
最後の望みと、智也さんを見れば、龍二さんと同様にニカッと笑っていってらっしゃいの挨拶。
智也さんは強面だから、笑うと怖さが倍増する。
そんな事、本人には間違っても言えないけど。