貴方の愛に捕らわれて
恥ずかしくって、真っ赤になって固まっていると、具合が悪いと勘違いする猛さん。
「疲れた顔をしているし、やっぱり医者へ行くぞ」
このままでは本当に病院に連れて行かれそうで、疲れたのは風邪のせいじゃなく、沢山の人の注目を集めて緊張したせいだからと、今日一日の出来事を話した。
「ごめんね、香織さん。1週間だけ我慢してくれないかな」
声の主は、助手席で少し困ったような笑顔の、龍二さんだった。
どうして1週間?
不思議に思っていると、これはデモンストレーションだからと、更に意味不明な説明をされた。
『あの…1週間経てば、一人で登校してもいいんですか?』
「いや、一人はまずいよね。
学校迄の車の送迎は止められないけど、校内での晃達の送り迎えは止めさせるから。ごめんね」
そう困った顔で何度も誤られたら、もう『はい』と返事をするしかなかった。
それから1週間、龍二さんとの約束通り、相沢先輩達の送り迎えはなくなった。
そして人の噂も七十五日とはよく言ったもので、相変わらず校内前に停められるフルスモークのベンツは注目されるものの、私の事をジロジロと見る生徒はいなくなった。
そして程なくして、私は以前のような落ち着いた生活を取り戻した。