貴方の愛に捕らわれて
猛 side
小さな頃から親元を離れ、大人の顔色を気にして育った香織は、我が儘とか甘えるという言葉を全く知らない女だった。
俺がいくら我が儘を言え、甘えろと言っても、なかなかそれが出来ない。そんな女だった。
それに旧家の娘として、礼儀作法に厳しく育てられたようで、食事を残す事に異様な罪悪感を感じていた。
早く栄養を付けさせたくて、少々強引に食事をさせれば、吐き気を催すほど無理をして食べる。
吐いて楽になれと、背中をさすってやれば、ごめんなさいと泣きながら謝罪する。
どうしてお前が謝る?寧ろ悪いのは無理をさせた俺だろ。
何故、気持ちが悪くなった所で食事を止めなかったのかと、その理由を聞き出せば、食事を用意した俺や智也に気兼ねして残す事が出来なかったと言う。
そんな気の弱い優しい香織に、俺は益々魅了された。
そして、初めて香織を抱き締めて眠った夜、俺は絶対にこの女を手放す事など出来ないと、思い知らされた。