貴方の愛に捕らわれて
 
自分でも、どうしてこんなに気持ちが乱されるのか、さっぱりわからない。



香織の事になると不安ばかりが先立ち、冷静でいられない。



東日本最大の勢力を誇る組織に君臨し、冷酷非情な性格から鬼虎と呼ばれるこの俺が、たかが小娘相手にこの有り様とは。



自分でも想像もつかなかった己の変化に戸惑っていると、胸の下から『許してもらえるなら何でもします』と上擦った声が聞こえてきた。



逸らしていた視線を戻せば、腕の中には真っ赤な顔で俺を見つめる潤んだ瞳。



どことなく怯えたような表情が、俺の加虐心を擽る。



出会った当初は、固い表情しか見せなかった香織が、今では俺の腕の中で、色んな表情を見せてくれる。



もっと香織の色んな表情を見てみたい。



そんな好奇心から、「これから毎朝おはようのキスをしろ」と無理を承知で迫ってやれば、『そんなのムリ』と首まで真っ赤にして狼狽える。



 
< 263 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop