貴方の愛に捕らわれて
 
思った通り初心《うぶ》な反応を見せる香織。



その困った顔も可愛いくて、ガキの様な意地悪をしてみたくなった。



固まる香織に態と顔を近づける。



恋人同士なら「キス」ぐらい当たり前だと迫ってやれば、全身を真っ赤に染めて困惑する姿は、まるで金魚みたいだ。



潤んだ瞳で、チラリと俺を見ては、また視線を泳がせる。



香織は、俺の言葉をすっかり信じきっているようだ。



可愛い反応を十分堪能した俺は、そろそろ冗談だと告げようとした瞬間、腕の中の香織がコクリと小さく頷き、消え入りそうな声で『はい』と呟いた。



くっそ、可愛い過ぎだろう。



思いもよらない展開に、ニヤケる顔を抑えられねぇ。



羞恥で震える桜色の唇を、思う存分貪りたい衝動に駆られるが、香織の抱えるトラウマを考え、軽く啄むだけのバードキスで我慢する。



 
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