貴方の愛に捕らわれて
名前を呼ばれて顔を上げれば、目の前にはピンクブラウンのセミロングの髪を、緩く巻いた物凄く綺麗な女の子がいた。
パッチリとした二重の大きな瞳に、すっと通った鼻筋。
ややぽってりとした色っぽい唇の端を引き結び、挑むように私を睨んで彼女は立っていた。
………別れて?
猛さんと付き合うようになって、私に話しかけて来る人はいなくなった。
それまでだって、自分など居ない存在のように無視されたり、意地の悪い嫌がらせを受けたりする事はあったけれど、突然現れた彼女の唐突な言葉に面食らう。
全く知らない人と「別れて」と言い放った彼女は、酷く興奮しているようだが、彼女の言葉や態度には、今まで私に意地悪をしてきた人達のような、悪意や侮蔑の色は見られなかった。
一瞬、人違いをしているのでは?という考えが浮かんだけれど、どうもそれはなさそうだ。
だって彼女は、はっきりと私の名前を呼んだもの。
では何………?