貴方の愛に捕らわれて
掴まれた腕を振り払った篠田さんが、勢い余って机にぶつかった。
それは一瞬の出来事だった。
篠田さんがぶつかった机は、側にいた私を巻き込み、派手な音をたてて倒れた。
「篠宮さん!!」
机に挟まれたような状態で床に倒れた私に、大柄な彼が駆け寄り慌てて抱き起こす。
『嫌!離して!!』
触れられた肩から全身に悪寒が走る。
恐怖と気持ち悪さで体温が一気に下がり、まるで貧血を起こした時のような目眩に襲われる。
かすれた悲鳴と拒絶の言葉をあげ、男の手から逃れようと必死にもがくが、強張った体がいうことを聞いてくれない。
「ちょっと…、大丈夫」
怖くて、怖くて、ただ見知らぬ男から逃れたい一心で、震えて体を縮める私の肩に、柔らかな指がおずおずと触れた。