貴方の愛に捕らわれて
「…………ごめん」
「チッ――」
呟くような謝罪の言葉に、盛大な舌打ちがかぶさる。
舌打ちをしたのは大柄な男で、篠田さんは男をチラリと見て何か言いたそうにしていたけど、結局何も言わなかった。
舌打ちの意味も分からなけば、どうして謝られたのかも全くわらない。
ただキョトンとする私に、篠田さんは思い詰めたような表情で、深々と頭を下げてきた。
「なんか私の勘違いみたい。本当にごめんなさい」
『…えっ、どういうこと…?』
「章司っていうのは、そこに座ってるヤツね。
で、そいつと私は付き合ってるんだけど……
最近何だか様子がおかしくて。
遅刻もせずに真面目に学校へ行ったり、休み時間も時々黙っていなくなるから、どうしたのって聞いても、答えてくれないし…
黙って後をつけてみたら、貴女の事をじぃっと見てた訳」