貴方の愛に捕らわれて
「香織。俺達は法や常識といったものには捕らわれない。
だがな、そんな俺達なもルールがない訳じゃない」
『ルールですか?』
「ああ。俺達の世界は、上の者の言う事は絶対だ。そして力が全てだ。
今回お前には大した怪我はなかったが、だからと言って何の処分もしなければ龍二の沽券に関わる。
龍二がナメられると云うことは、その上である俺がナメられると云うことだ。
俺達は生き馬の眼を射抜くような世界で生きているんだ。ナメられたら最後、それは死につながる」
膝の上に載せた香織の身体がピクリとはねた。
うつむき加減だった顔は上げられ、こちらを見つめる瞳には不安が濃く現れ、小さな唇も小刻みに震えている。
「俺の事が怖くなったか?こんな理不尽な世界は受け入れられないか?」
苦い思いを飲み込み香織に問い掛ければ、膝の上で震える小さな身体がギュッと抱きついてきた。