貴方の愛に捕らわれて
 

赤い実に優しく歯を当ててやると、更に胸を突き出すように上体をそらせる。



『あぁっ、……く…ん……』



嬌声を漏らさぬよう、右手の甲を噛んで必死に堪える香織。



声を聞かせろと耳元で囁き、噛み痕の付いた右手を口元から外してやるが、首を振ってイヤイヤをする。



耳朶を甘噛みし、舌を伸ばして耳の中をくちゅりと淫猥に舐め上げてやるが、香織は息を止めて必死に声を抑えている。



その頑なな姿に、ふと、こいつが今まで受けてきた仕打ちを思い、愛撫する手を止める。



「香織、俺に可愛い声を聞かせるのは、そんなに嫌か?」



俺の問い掛けに、恥ずかしそうに背けられていた顔が、こちらを向く。



今にも泣きそうな顔で見上げてくる香織に、その胸の内に巣くう不安を取り除いてやるべく、言葉を紡ぐ。



 

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