貴方の愛に捕らわれて
赤くなったり青くなったりしながら、必死にお医者さんは必要ありませんと言う私に、本当に大丈夫なんだなと念を押すと、注意深く私を見つめたまま、猛さんは携帯をベッドサイドに置いてくれた。
「じゃあどうして俯いて震えていた?何がお前を不安にしたんだ?」
『………』
「いいか香織。前にも言ったが、お前の不安を取り除く為なら、どんなことでもしてやる。
だが、何がお前を不安にさせているのか教えてくれなければ、そいつを取り除いてやることができない。
言ってみろよ。俺の何がお前を不安にさせる?」
私にひたと向けられた視線は、微動だにしない。添えられた親指だけが、優しくいたわるように頬を撫でてゆく。
私は何をやっているんだろ。猛さんに自分の心の内をちゃんと伝えると、あれほど約束したのに。
猛さんは何時だって何度でも、私が不安にならないように心の内を言葉にして伝えてくれるのに。