貴方の愛に捕らわれて
「俺に愛される自信がないと言うなら、いくらだってくれてやる。
言葉だけじゃ不安なら、確固たる地位をやる。
だが、これを役所へ出した瞬間から、お前は普通の暮らしを失う。
それでも俺の腕の中に居るのなら、それに見合うだけのものを、俺がお前にくれてやる」
無骨な手が、その手に似合わぬ穏やかさで優しく髪を梳いてゆく。
以前にも言われたことだけど、猛さんの側に居ることで失う「普通の暮らし」って何だろう。
そもそも私にとって「普通」なんて、最初から無かったじゃない。
猛さんと出会う前の私には、なんにもなかった。
猛さんと出会って、どれほどのものを与えてもらったか。
隣に寄り添う者のいる喜び。
必要とされる喜び。
愛される喜び。