貴方の愛に捕らわれて
猛さんは、黙って私の話しを聞いてくれた。
途中、自分の気持ちをどう表現したらいいのか言葉につっかえる度に、焦らせることなく優しく背中をさすって、辛抱強く私の話しに耳を傾けてくれた。
だからだろう。気持ちを言葉にして伝えるうちに、先ほど自分の中に芽生えた「猛さんと共に生きてゆく」という決意は、もう「猛さん無しでは生きられない」ということに他ならないのだと、気づかされた。
それは私が、猛さんという甘美で堅牢な檻に捕らえられたらと、初めて自覚した瞬間でもあった。
「お前の気持ちはよくわかった。だが、それなら余計に無理して行く必要はないだろう。
来週からは登校するんだ。今日一日休んだぐらいで、誰もお前が逃げたなんて思わないさ」
そう言って優しく頭を撫でる猛さんは、反則だと思う。
そんな風に言われたら、猛さんの言葉に従う他ないじゃない。