貴方の愛に捕らわれて
 

学校に行くことを諦め、コテンと猛さんの胸に頭を預けると、「ところで」と固い声が響いた。



「香織、昨日は聞きそびれたが、もう一つお前に確認しなきゃならない事がある。


何で昨日、電話に出なかった?」



『………電話?』



「ああ。昨日お前の携帯を何度も鳴らしたが、何故出なかった」



携帯………。あ!



しまった。携帯、鞄の中に入れたままだ。



猛さんと交わした約束が脳裏を過ぎる。



携帯には必ず出ること。出れなかった場合は直ぐに折り返すこと。



それは学校内で派手な護衛を止めてもらう為に交わした約束。



以前、着信に気付かず散々心配を掛けた際に、今後は一人で外出する際には携帯を肌身離さず持ち歩くと約束したのに。



すうっと血の気が引いて行くのが、自分でもわかる。



青ざめた顔でチラリと仰ぎ見れば、表情もなく見据える猛さんからは、何の感情も伺い知ることが出来ない。



 

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