貴方の愛に捕らわれて
 

まじまじと見つめること数秒。脳裏に浮かんだのは、


――っ!!アレだ!信楽焼のアレ!




タヌキだ!



人懐っこい温和な雰囲気といい、愛嬌のある顔立ちといい、その風貌はトックリを下げたタヌキの置物を連想させた。



そんな失礼なことを思い浮かべている私に、ニコニコと握手を求める住田先生。


とても良い人そうな住田先生は、苦手なタイプの男の人ではないのに、何故か手を取るのを躊躇してしまう。



ぎこちなく握手に応じる私を、気にした様子もなく親しげに話しかけてくださる住田先生。



「この度はおめでとうでいいんだよね?

いや、私にも貴女より少し年上の娘が一人いてね。貴女の事が他人事に思えないんだよ。


本当にいいのかね?年頃の娘さんの楽しみも知らずに嫁いでしまって。後悔しないかい?」



例えこの先、何があっても後悔なんてする訳ない。



そんな決意を込めて、こちらを伺う住田先生にコクリと頷く。



 

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