貴方の愛に捕らわれて
事の発端は、住田先生が奨学金辞退の手続きのため、学校を訪れた際に担任から聞かされた話が原因だという。
手続きが済んで席を立とうとした住田先生に、校長先生が経済的な問題がないのであれば、是非とも私の大学受験を検討してもらえないかと、切り出したのだという。
何でも私の学力レベルなら、地元の国立T大学の合格が間違いなく、それは東山高校始まって以来の快挙なのだという。
確かに一年生の秋、当時の担任に大学受験を打診されたことはあったけど、一日も早く就職して自立したかった私は、進学するつもりはないとキッパリ断っていた。
先生は勿体無いと嘆いていたが、奨学金で通う私にそれ以上、その話しをする事はなかった。
ところが、学費を支払ってくれる後見人が出来たことで、その話が蒸し返されることになったのだという。