貴方の愛に捕らわれて
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無事に入籍手続きも終わり、住田先生の車で帰路につく。
ぼんやりと窓から見える景色を眺めていると、行きと違う風景だと気がつく。
帰りは違う道を通るのだろうか?不自然にならないように、周りの景色を観察する。
おかしい。明らかにマンションとは違う方角に向かって車は進んでいる。
手続きが済んだらマンションまで送ってもらえる筈なのに、何処へ向かってるの?
運転席の住田先生に気づかれないよう、ポケットにそっと手を忍ばせる。
恐怖と緊張で震える指先で、ポケットの中の携帯を握りしめた。
「ポケットの中は携帯かな?」
前を向いたままの状態なのに、唐突に自分の行動を言い当てられ、ギクリとなる。
携帯を握りしめる手に、思わず力がこもった。
「安心しなさい。猛君に頼まれて本宅に向かってるんだよ」
『本宅?』