貴方の愛に捕らわれて
その塀は分厚いコンクリート製で、上部には有刺鉄線が張り巡らされて外側に傾斜した忍び返しまでがついており、異様な威圧感を放っていた。
その塀沿いに暫く進むと、黒々とした鉄柵状の大きな門扉が現れた。
門の横には《郷田組》と書かれた立派な看板があって、ここが本宅なのだと理解した。
車は速度を落として重厚な門に近付く。すると門扉が自動で内側にゆっくりと開かれてゆく。
車はそのままゆっくりと進み、大きなお屋敷の正面で停止した。
車が止まると同時に、後部座席のドアが開かれた。
ドアを開けてくれたのは龍二さんで、お帰りなさいとにっこり微笑んでくれる。
私も小さな声でただいまと返すと、うろうろと視線をさ迷わせる。
だって車内から見えてたんだもん。ずらりと並んで出迎える強面のおじ様やお兄様方が。