貴方の愛に捕らわれて
猛さんの姿を求めて車内で固まる私に、どうぞと笑顔で手を差し伸べてくれる龍二さん。
ここで怖じ気づいてても仕方ないよね。自分自身に活を入れるよう小さく息を吐きだすと、覚悟を決めてその手を掴んだ。
一歩、車外に踏み出した瞬間「お帰りなさい、姐さん」と野太い声の大合唱。
その迫力たるや……。びっくりして思わず車内に逃げ戻ろうとする私の手を、全てお見通しの龍二さんが、ガッチリ掴んで離さない。
そしてビクつく私の手を掴んだまま「組長がお待ちです」と告げると、居並ぶ男達の間を手を引いてお屋敷に案内してくれた。
龍二さんに案内されてたどり着いたのは、迫力のある竜虎が煌びやかに描かれた襖(ふすま)の前。
龍二さんは襖の前で膝をつくと「姐さんがお戻りです」と告げて襖を開く。
どうぞと入室を促されて恐る恐る中を覗けば―――お寺?
中は物凄く広い和室だった。その光景は、その昔、祖父母に連れられて行った菩提寺のお堂を彷彿とさせた。