貴方の愛に捕らわれて
 

―――穴があったら入りたい。



ズラリと居並ぶ三十人程の男達の不躾な視線に曝され、真っ赤になって猛さんの横で身を小さくしていると、大広間に猛さんの低い声が響きわたった。



「妻の香織だ。今日からここで暮らす。俺同様にこいつにも仕えてくれ。


香織は組の事には一切関わりを持たせない。そのように心得ろ」



そう告げると、表情を和らげて目で私を促す。




『香織です。どうぞよろしくお願いします』



それだけ言うと畳に手をつき、深く頭を下げた。




「「よろしくお願いします。姐さん」」



お約束通りの野太い合唱に、笑顔が引きつったのは大目に見て欲しい。





そしてここでもやはり、龍二さんが居並ぶ男達の紹介をしてくれた。



龍二さんの話しによると、この大広間には現在三十五人の男達が集まっていて、その内の十二~十三人程が交代で本宅と呼ばれるこの屋敷に詰めているらしい。



通いの人もいれば住み込み?の人もいて、この他にもまだまだ沢山の組員さんを抱えているのだという。



 

< 368 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop