貴方の愛に捕らわれて
―――穴があったら入りたい。
ズラリと居並ぶ三十人程の男達の不躾な視線に曝され、真っ赤になって猛さんの横で身を小さくしていると、大広間に猛さんの低い声が響きわたった。
「妻の香織だ。今日からここで暮らす。俺同様にこいつにも仕えてくれ。
香織は組の事には一切関わりを持たせない。そのように心得ろ」
そう告げると、表情を和らげて目で私を促す。
『香織です。どうぞよろしくお願いします』
それだけ言うと畳に手をつき、深く頭を下げた。
「「よろしくお願いします。姐さん」」
お約束通りの野太い合唱に、笑顔が引きつったのは大目に見て欲しい。
そしてここでもやはり、龍二さんが居並ぶ男達の紹介をしてくれた。
龍二さんの話しによると、この大広間には現在三十五人の男達が集まっていて、その内の十二~十三人程が交代で本宅と呼ばれるこの屋敷に詰めているらしい。
通いの人もいれば住み込み?の人もいて、この他にもまだまだ沢山の組員さんを抱えているのだという。