貴方の愛に捕らわれて
 

猛さんと結婚して三週間。本宅での暮らしにも徐々に慣れてきた。



ここでの生活は、まるでホテル暮らしのように至れり尽くせりだ。



なんというか、する事がないのだ。



掃除も洗濯も料理も、全て家政婦の藤野さんがしてくれる。だから私は、学校と部屋を往復するだけの毎日。



本宅生活三日目に、プライベートスペースになっている奥の三階ぐらいは、自分で掃除したいと藤野さんに話したら、藤野さんを酷く傷つけてしまった。



「大旦那様(猛さんのお父様)の時代から、プライベートスペースも全てお任せて頂いておりましたのに。私の事が信用なりませんか。


至らぬ点は直しますから、どうぞ仰って下さい」



自分の母親より年上の藤野さんに、泣かれてしまったのには本当に困った。



そんなつもりで言ったんじゃないです。そう否定するのが精一杯で、結局、申し訳ないと思いつつも全て藤野さんにお任せすることになってしまった。



 

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