貴方の愛に捕らわれて
「相変わらず、ガッツリ入ってるよねぇ」
私のお弁当箱を覗き込んで、苦笑する由香里。
今日のおかずは唐揚げと玉子焼きに、肉じゃが。
別になんの変哲もないお弁当なのだが、ため息の原因は、肉じゃがの人参と玉ねぎ。
大きくカットされたそれを、恨めしく見つめる。
目の前に座る友人に涙目になりつつ、お弁当箱を差し出せば、「仕方ないなぁ~子供じゃないんだから、好き嫌い直しなよ」と笑いながらも、玉ねぎと人参をヒョイヒョイとつまんでくれた。
分かってるんだけどね。玉ねぎも人参も嫌いだけど、全く食べられない訳じゃないの。
ただねぇ、大きさがね……。もっと薄く?っていうか、小さくカットされていれば、食べられるんだよ。
そう主張すれば、更に子供かって笑われた。
「あのさあ、はっきり言ってみたら?もう少し小さく切ってって」
『う~ん……それはちょっとねぇ』
「何で香織が遠慮するのかわかんない。だって藤野さんって家政婦さんなんでしょ?雇い主の好みに合わせて料理するのって、当たり前じゃない?」