貴方の愛に捕らわれて
 

「相変わらず、ガッツリ入ってるよねぇ」



私のお弁当箱を覗き込んで、苦笑する由香里。



今日のおかずは唐揚げと玉子焼きに、肉じゃが。



別になんの変哲もないお弁当なのだが、ため息の原因は、肉じゃがの人参と玉ねぎ。



大きくカットされたそれを、恨めしく見つめる。



目の前に座る友人に涙目になりつつ、お弁当箱を差し出せば、「仕方ないなぁ~子供じゃないんだから、好き嫌い直しなよ」と笑いながらも、玉ねぎと人参をヒョイヒョイとつまんでくれた。



分かってるんだけどね。玉ねぎも人参も嫌いだけど、全く食べられない訳じゃないの。



ただねぇ、大きさがね……。もっと薄く?っていうか、小さくカットされていれば、食べられるんだよ。



そう主張すれば、更に子供かって笑われた。



「あのさあ、はっきり言ってみたら?もう少し小さく切ってって」



『う~ん……それはちょっとねぇ』



「何で香織が遠慮するのかわかんない。だって藤野さんって家政婦さんなんでしょ?雇い主の好みに合わせて料理するのって、当たり前じゃない?」



 
< 375 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop