貴方の愛に捕らわれて
『雇い主は猛さんだし。それに食べられないのは、私だけだしね』
家のことを全てやってくれ、尚且つ私のお弁当まで用意してくれてる藤野さんに、これ以上何かを言うなんて我が儘、言えるわけがない。
それに、彼女は私のことを認めてない。
それは偶然だった。いつものように学校から帰宅した私は、猛さんが用意してくれてた自分の部屋で勉強をしていた。
その日は、まだ4月だというのに夏日のような暑さで、窓から吹き込む温い風に誘われるように、ふと庭に目を向ければ花壇の花が急な暑さで、ぐったりとしているように見えた。
その花壇はいつだったか、花が好きだと話した私の言葉を覚えていてくれた猛さんが、マンションでは無理だったけど此処ならばと、私の為に作ってくれたものだ。
時計を見れば6時を少しまわっていた。気分転換も兼ねて、私は庭に降りてみた。
直ぐに若い衆がどうしましたと駆け寄ってきた。