貴方の愛に捕らわれて
 

いつも帰宅すると直ぐに自室にこもり、猛さんが一緒の時しか奥から顔を出さない私が、一人でふらりと庭に現れた所為で、警護の人を驚かせてしまったらしい。



警戒も露わに、鋭い眼差しで辺りを伺いながら駆け寄ってきてきたのは、猛さんのお父様の代からいる古参の佐武さん。



どうしましたかと問うわれて、若干びびりながらも、花壇に水をやりたいのだと告げると、佐武さんは強面な顔をクシャッと歪めて、ホースの位置まで案内してくれた。



私が怖がらないように気を使ってくれたんだと思う。



けど佐武さんはの笑顔は、何とも言い難い凄みを醸し出してて、怖さ五割り増しだった。



思わず喉の奥から悲鳴が漏れそうになったけど、瞳が優しく笑っているのに気がついて、叫び声を上げずに済んだのは一生の秘密にしようと思う。




佐武さんは、何か有りましたらお呼び下さいと、こちらが恐縮するほど丁寧なお辞儀をして去って行った。



 

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