貴方の愛に捕らわれて
 

そのことに思い至って、漸く思考が回りだす。



どうしよう…。とにかく謝らなきゃ。



先ほどの藤野さんの様子を思い出すと、足がすくんで動けなくなりそうになる。



そんな気弱な自分を必死で叱咤し、キッチンに向かった。



さほど距離もないキッチンが、酷く遠くに感じられる。



小刻みに震える指をぎゅっと握りしめドアを開けば、中からドサッドサッと物音が聞こえてきた。



見れば、此方に背を向けた藤野さんが、お皿に盛られた料理をゴミ箱に捨てていた。



その衝撃の光景に言葉が出てこない。



呆然と立ち竦む私の気配に気がついた藤野さんが振り返る。



私をチラリと見ると先ほどのような無表情で、まだ何か用でもあるのかと聞いてくる。



口の中がカラカラに渇いて、舌が喉に張り付いて上手く声が出せない。



 

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