貴方の愛に捕らわれて
藤野さんは、うんざりといった風情でため息をつくと、
「ああ、私に荷物をお部屋まで運べと仰りたいんですか」
『ちがっ』
「なら、何です。用が無ければ、さっさとお部屋でお休み下さいな。
随分と羽目を外してお遊びになったんですから、さぞかしお疲れでしょうに」
否定の言葉を途中で遮られ、藤野さんはくるりと背を向けると、お皿を食器洗い機にセットしだした。
全身で表された拒絶に、ごめんなさいと呟くのが精一杯だった。
逃げるようにキッチンを後にすると、そのまま寝室のベットに潜り込む。
柔らかな掛布からは仄かにスパイシーな香りがして、ガタガタと震える体を小さく丸めていると、まるで猛さんに抱きしめられているみたいで、段々と気持ちが落ち着いてくる。
その内、今日の疲れも相まって、いつの間にか私はそのまま眠り込んでしまった。