貴方の愛に捕らわれて
腕の中から消えた温もりに、寂しいなんて感傷的な気分になり苦笑する。
それから暫くして起き出した俺は、時間を気にせず遊んで来いと告げて、仕事に向かった。
事務所で書類に目を通していると、龍二の携帯が鳴る。
香織には知らせないが、実は一時間毎にアイツがどこにいて何をしているのか、報告が入るようになっていた。
初めての外出に神経質になっていた俺は、当初コッソリと香織の後をつける気でいた。
それを知った龍二が、下の者に一時間毎に報告させると妥協案を提示した事で、俺のストーカー行為は未遂に終わった。
まあ関東を牛耳るヤクザの頭が、自分の女をストーカーする姿なんざ、誰も見たくないだろう。だから直接見守りたいのを渋々我慢した。
一時間毎に送らてくる写真データには、嬉しそうにダチとはしゃぐ姿が納められていて、その笑顔を見ていると胸の奥に温いものが込み上げてくる。