貴方の愛に捕らわれて
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修学旅行はとても楽しかった。
由香里と色んなお店をまわったり、素晴らしい景色を堪能したり、夜は隣り合わせのベッドで眠るのも忘れて、お喋りに花を咲かせた。
だけども……
どんなに素敵な景色を見ても、『綺麗ですね』と振り仰いだ右隣りに大好きな猛さんの姿がなくて、ああ、猛さんと一緒じゃなかったんだと思い出す度に軽く落ち込んだ。
そして旅行も三日目になると、目覚めた時に無意識に伸ばした指先が、冷ややかなシーツに触れる感覚に、いつの間にか一人で目覚める朝が寂しくて仕方がない自分の変化に、驚いた。
漸く四泊五日の日程を終えて空港に降り立った時には、一刻も早く家に帰りたくて、旅行は楽しかったけど、もう一生行かなくてもいいやって思った。
空港のロビーには、にこやかな笑みを浮かべた龍二さんが、迎えに来てくれていた。