貴方の愛に捕らわれて
「姐さんが階段から落ちて、意識不明です」
思いも寄らない報告に、俺の頭は一瞬真っ白になった。
「榊先生の指示で救急車を呼び、今は病院へ向かっている最中です。
怪我の程度はまだ分かりませんが、目立った外傷は有りませんでした。
何度呼び掛けても意識が戻らないので、医療設備の整った病院へ向かっています。到着次第、すぐ検査になりますので、詳しい事はその後になります。
留守を任されていながら、申し訳ありません」
淡々と告げられる内容に、頭に浮かぶのは「やられた」の一言だった。
暫し呆然と報告を受けていたが、佐武の絞り出したような謝罪の言葉で、呆けている場合じゃねえと自分に活を入れる。
「どうしてこんな事になった!!」
突然、携帯に向かって声を荒げた俺に、何事かと龍二と智也が飛んでくる。
緊張に顔を強ばらせる二人を前に、佐武から受けた報告は「藤野に突き飛ばされ階段を落ちたのではないか」というものだった。