貴方の愛に捕らわれて
 

そのはっきりしない物言いに、どういうことだと苛立ちを露わにすれば、肝心の香織の意識がないため、確認の取りようがないと言う。



ただ、一階で詰めていた佐武が微かな怒鳴り声を耳にし、様子を見に持ち場を離れたのとほぼ同時に、何か固い物が階段を落ちてくる音と、香織の悲鳴を聞いたこと。



そして佐武が二階に駆けつけた時、階段下に倒れて意識の無い香織を、三階の踊場から顔面蒼白で見下ろしていた藤野の様子から、藤野が口論の末に突き落としたと見て、まず間違いないだろうと言った。



藤野の身軽はそのまま拘束し、今は事務所の地下室に監禁したという。



一通りの現状報告を受けた俺は、佐武にある事を指示して電話を切った。




電話を切ると、龍二と智也が黙って俺の指示を待つ。



途中から通話をスピーカーに切り換えていたため、二人にも状況は伝わっている。



今にも爆発しそうな怒りを、奥歯をギリリと噛み締めなんとかねじ伏せると、指示を待つ龍二に、今夜の会合は予定通りに行う事を告げた。



 

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