貴方の愛に捕らわれて
 

暴対課の刑事が脅して、少年課の婦警が味方を装ってとりなす。恫喝と懐柔は奴らの常套手段だ。



相手はまだ世間を知らねえ小娘。誰もが簡単に騙されると思ったろう。だがその予想に反して、甘言を歯牙にもかけなかった香織。



幼い頃から、人の顔色を伺って生きてきたからだろうか。



刑事の嘘を見破った香織は、余計な事は一言も漏らさず、堂々とした態度で、奴らをあしらったという。



しかも佐武が何も言わなくても、最初から事故で通していた香織の判断力には、正直驚かされた。



今回の一件で香織に対する評価は、かなり変わっただろう。



臆病で、繊細で、酷く傷つき易くて甘えたなくせに、自分は守られるだけの弱い存在じゃない、姐としての自覚と覚悟があるのだと自ら示し、佐武達に認めさせちまった。



もう少しだけ待ってろよ香織。帰ったらその華奢な身体を抱きしめ、俺の腕の中で、思う存分甘やかせてやるからな。



 

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