貴方の愛に捕らわれて
 

冴子を伴い戻った俺に、その場の視線が一斉に集まる。



ゆったりと室内を見渡し、全員の注目を集めているのを確認すると、腕に絡みついた冴子を勢い良い突き飛ばした。



悲鳴を上げもんどり打つ冴子。ざわついていた室内が、一瞬水を打ったように静まり返る。



「どういう事ですか」



真っ先に口を開いたのは武田組組長。自分の姪が、俺の事を上手く誑し込んだと勘違いして、脂下がった笑顔を浮かべていたのが一変、不快に顔を歪めて抗議の声を上げる。



「それはこちらのセリフですよ」



後ろに控えていた龍二が、冴子のしでかした一切を詳らかにすると、その場は騒然となった。



「そんなのウソよ!失礼じゃなくて龍二。何の証拠があってそんな事を言うのかしら」



自分の指示通りに口封じが出来ていると思っい込んでる冴子が、龍二に食ってかかる。



「上杉、言いがかりも大概にしろや。こんな大勢の前で恥をかかせて、唯で済むと思ってねえだろうな」



強気な姪の態度に、証拠隠滅を確信した武田が大きく出た。


 

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