貴方の愛に捕らわれて
ダブついた腹に思いっ切り蹴りをぶち込む。二メートルほど吹っ飛んだ男は、ようやく己の失言に気がついたようだ。
無様にひっくり返り、顔面を蒼白にして「そんなつもりは毛頭ない」と、脂汗をダラダラと流しながら言い訳を口にする男に逃げ場はない。
姪が勝手にやった事。そうしらを切られれば、適当なところで手打ちとなっただろう。
何代も続く古参の組。ただそれだけの理由で、組織の中核で胡座をかいて来た男は、慢心ゆえか唯の無能か並み居る幹部の前で、ああもはっきりと俺を軽んじ、付け入る隙を与えてくれるとは。
徐々に追い詰め、いずれは切り捨てるつもりでいたが、この好機を逃す手はねえ。
頭にカビをはやした役立たずどもも一掃し、新しい風を組織内に取り込むのに、いい機会だ。
まずは手始めに、目の前で醜態をさらす男を血祭りに上げるべく、俺は牙をむいた。
猛 side end