貴方の愛に捕らわれて
それにしても、龍二の誘いに乗らない女を初めて見た。
香織の態度に気をよくした俺は、もう少し二人のやり取りを静観する事にした。
いくら出会いの印象が最悪でも、あれだけ優しく誘う龍二に一向になびなかいとは……
龍二も女に拒否られるのは初めてなんだろう。珍しく焦っていやがる。
必死に笑いを堪えて二人の様子を見ていたが、困り果てた香織が俺の服の裾を掴んで、涙目になりながら助けを求めてきた。
「~~~~ッ」
なんだよコレ!
可愛いすぎる香織の反応に堪えきれず、俺は助け舟を出してやることにした。
「何か予定でもあるのか?」
優しく聞いてやると、弾かれたように『バイト』があるからと断る香織。
どうするのかと龍二を見れば、「送る」と更に笑顔で迫る。
それでも車に乗る決心がつかずに固まる香織に、視線を合わせて、大丈夫だから車に乗れと優しく促す。
潤んだ瞳で俺をじっと見つめる香織。
華奢な背中に手を添え、そっと押してやると、小鳥をようやく車に乗せることができた。