貴方の愛に捕らわれて
「…風邪薬ですね……」
予想外の言葉が龍二の口から漏れる。
目の前には、てっきり裸で布団の中にいるとばかり思い込んでいた香織が、ジーンズにセーター姿で小さくうずくまっている。
訳の分からない状況に、ただじっと香織を見下ろしていると、かすれた声で『どうして…』と呟きながら香織がゆっくりと体を起こした。
だが次の瞬間、『ぁっ…』と小さな声を上げて、香織はパタリとベッドに横たわり意識を失った。
「香織!?」
驚いて声を掛けたが、ハァハァと荒い息を繰り返すばかりで全く反応がない。
今まで頭に血が上っていたせいで気が付かなかったが、香織の様子がおかしい。
名前を呼びながら、その華奢な体に触れれば、異様に熱い。
熱があるのか……?
「龍二!榊を呼べ。香織の様子がおかしい。どうも熱があるようだ」
それだけ言うと、ベッドの上に無造作に脱がれた香織のコートを手にする。
香織の小さな体をコートでくるむと、そっと抱き上げる。
「どうされるんで?」
「マンションに連れて行く」