貴方の愛に捕らわれて
「いや、まだ1~2日は熱が続くだろうから、熱のある間は頭を冷やして、十分な水分を取らせて、熱が下がっても3日ぐらいは安静にしてくれ」
「おい、何でそんなにかかるんだよ。すぐに治せ」
風邪をひいても熱なんて出した事のない俺は、苦しそうな香織の姿を思い出して榊に詰め寄る。
「おいおい。普通でも風邪で熱を出せば、治るのに2~3日はかかるんだよ。
ましてや、このお嬢さんは、あんまりいい栄養状態にない。
検査をしていないから断定はしないが、恐らく栄養失調だろう。貧血もそこから来ているものだと思う」
「栄養失調?どういう事だ?」
「このお嬢さん、3食きちんと食べてるか?」
「ああ。前に聞いた時はちゃんと食ってるって言ってたぞ」
「食べてないな。そうでなきゃ、あんなにガリガリに痩せる筈がない」
榊の言葉に唖然とする。
確かに、すげぇ少食だとは思ったが、体が小さいからだと思っていた。
ガリガリってどういう事だよ。
「意識が戻ったら、消化のいいものを食べさせてやれ」
そう言うと、帰り支度を始める。
「おい。消化のいいものって何だ?それに頭を冷やすってどうやるんだ?」
「聞いてどうするんだ?その辺の細かい事は、龍二か智也が心得てるだろ」
呆れ顔でそれだけ言うと、榊はさっさと帰って行った。