貴方の愛に捕らわれて
開いたドアから現れたのは、短い髪を茶色に染めた、猛さんよりも若い男の人だった。
男の人は、私と猛さんを見て一瞬ギョッとした顔をしていたけど、持ってきたお盆をベッドサイドのテーブルに置いて、話しかけてきた。
「あの、梅干しって大丈夫ですか?」
急に知らない男の人に話しかけられ、体がピクリとはねる。
すると猛さんは、私を安心させるように、お腹に回していた左腕に少し力を込めてギュッと抱きしめてくれた。
そして右手で私の顎を捉えると、猛さんの方へ向けて、私の目をじっと見て低い声で優しく囁いた。
「大丈夫だ。コイツは智也といって、いつも車を運転してるヤツだ。知ってるだろ?
何もしないから心配いらない」
猛さんの力強い瞳に捕らわれ、視線をそらす事が出来ない。
私は猛さんの目を見つめて、ただコクンと頷いた。