貴方の愛に捕らわれて
私が落ち着いたのを確認すると、猛さんはフッと笑って顎を捉えていた右手を離した。
「智也、梅干しがどうした」
「熱がある時は口がおかしくなるんで、普通の白粥より梅干しを入れた方が食いやすいかと思いまして」
「そうなのか?」
「はい。ただ、梅干しが嫌いだと入れない方がいいかと思いまして」
そんな二人のやり取りを聞いていたら、耳元に顔を寄せた猛さんに「梅干しは大丈夫か?」って優しく聞かれた。
耳に息がかかるほどの距離の近さに、私は真っ赤な顔を俯かせ、返事の代わりにコクンと頷いた。
まともに返事をする事も出来ない私に、気分を害した様子もなく智也さんは「じゃあ入れますね」と言ってお盆の上のお粥に、梅干しを入れてくれた。
そして「どうぞ」と言いながらお粥の入ったお椀を、私に差し出される。