貴方の愛に捕らわれて
どうしよう……。
体がだるくて、何も食べたくない。
けど、私のために用意してくれたお粥を断る勇気もなくて、智也さんが差し出すお椀を、じっと見つめる。
すると智也さんは、困った顔をして更にお椀を差し出してくる。
「少しだけでも、食べて下さい。風邪は体力をつけないと治りませんから」
そう言いながら、お椀を持って近づいてくる智也さんに緊張して固まる私は、指一本たりとも動かすことが出来ない。
体を強ばらせて俯いていると、不意に後ろから猛さんの腕が伸びて来て、お椀を受け取った。
「香織、一口だけでもいいから食え」
そう言うと、猛さんはお粥を一さじすくって私の口元に運んだ。
スプーンが“ちょんちょん”と唇に当てられ、食べるように促される。