記憶の桜 -花空残夢-
【土方】


俺は家人を連れ、総司の部屋に戻って来た。




中から総司の啜り泣く声がする。




何事かと障子を開けると、啜り泣く総司を涼が抱き締めていた。



総司は俺の姿に気付き、涼から身体を離した。




「落ち着きましたか?」




「うん。ありがとう、涼ちゃん」




総司は涼の問いかけに、笑顔で答えた。




それは愛しい人に向けるような優しい笑顔だった。



まさか、総司は涼の事――。




ちくり――。




今まで感じた事が無い感覚を胸に感じた。




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