記憶の桜 -花空残夢-
俺はそんな涼を抱き寄せた。
恋仲でも無いのに、涼のこんな姿を見ると、抱き締めたくなる。
「総司が自分を苦しめた奴に対して、礼を言うと思うか?」
あいつの性格からして、それは絶対に無い。
嫌味は言うと思うがな…。
涼もそう思ったらしく、俺の腕の中で首を横に振った。
「そうだろ?あいつは涼に感謝してると思うぜ。お前は誰も傷付けちゃいねぇよ。だから、自分を責めんな」
涼は頷くと、俺の胸にしがみつき、しばらく泣いていた。
俺は優しくて、すぐに泣く小さなこいつを守りたい。
何故、そう思うのだろうか――。