記憶の桜 -花空残夢-


彼が蝦夷に行ってから、私は愁が取った宿に居候していた。




「何故なの…、土方さん…」




この言葉を呟いたのは何回目だろうか…。




私は部屋の片隅に膝を抱え、丸くなっていた。




私は傍らに置いていた浅葱色の羽織に視線を移した。




私が彼と滞在していた宿で繕っていた彼の羽織…。




もう着ないだろうと思ったけど、糸のほつれが気になったし、何よりも大切な思い出の品だから…。




でも、これを渡す前に彼は…。





< 143 / 274 >

この作品をシェア

pagetop