記憶の桜 -花空残夢-
彼が蝦夷に行ってから、私は愁が取った宿に居候していた。
「何故なの…、土方さん…」
この言葉を呟いたのは何回目だろうか…。
私は部屋の片隅に膝を抱え、丸くなっていた。
私は傍らに置いていた浅葱色の羽織に視線を移した。
私が彼と滞在していた宿で繕っていた彼の羽織…。
もう着ないだろうと思ったけど、糸のほつれが気になったし、何よりも大切な思い出の品だから…。
でも、これを渡す前に彼は…。