記憶の桜 -花空残夢-
「大丈夫だ、俺は此処に居る。これのおかげでな」
そう言って、袂から母上の形見であるあの扇を取り出した。
銃で撃たれたあの時、彼はこの扇を懐に入れていたらしい。
それがあったおかげで上手く軌道が外れ、助かったのだ。
その証拠に扇の漆塗りの部分は色がはげ、ひびが入っていた。
「母上が土方さんを守ってくれたんですよ」
「そうだな…」
彼は優しい笑みを浮かべた。
すると、私の目の前を桜の花びらが横切った。