記憶の桜 -花空残夢-
「知らない。だから、さっさと顎から汚い指を離せ」
「そうか。ならば…」
男は顎を掴んでいた手を離すと、私の頬を平手打ちした。
頬に鋭い痛みが走り、口の中に鉄の味が広がる。
「吐け。吐かぬなら、もう一度行くぞ」
「…っ!」
言うよりも手の方が早かった気がする。
もう一度、私の頬に痛みが走った。
「何度やろうと、私は吐かない…」
私が男を睨みつけると、男は周りに居た2人の男に私を任せ、牢を出て行った。