虹のふもと
せなか
まだ小さかった頃の話し。朝起きると、母は泣いていた。
「おはよう。」
隠しても隠しきれない程に目は腫れていて、まだ3歳くらいだった私は、その涙の理由をどこからか感じ取っていた。
「お父さん、お仕事行ったの?」
「そうだよ。」
母の頭を撫でると、自然と涙が溢れて来る。大好きなお母さん、大好きなお父さん。でも、お母さんを泣かす…大嫌いなお父さん。
「かなしいねぇ。かなしいねぇ。」
気がつくと泣き疲れて、また私は眠っていた。そんな毎日が私の日課とも言えた。目が覚めると、母の目も元に戻っていて、私もすっかり元気いっぱいになっている。すっかり忘れてしまったかのように。
【毎日続く夢】
そう思えた。
15歳の誕生日の日。
「会社辞めたんだ。」
遅く帰って来た父の部屋から漏れるように聞えて来た言葉。
「明日からどうするの?」
母の強い声がする。
「どうにかするよ、どうにでもなるんだ!先輩が来ないかって言ってくれているんだ。心配しなくて良いから!」
それ以上に強い声がする。酔っているのは口調でわかった。いつものように父は酒に酔っていて、都合の悪いことには怒鳴り散らし、次の日には忘れていた。
転職したかと思えば、数か月で大きな荷物を抱えて帰ってくる。そんなことが何年も続いた。何も聞かなくても、また会社を辞めたのかとわかるようになった。その間も母は働き続けた。そして私も、高校生になってから毎日毎日学校が終わってからバイトへ出かけた。
「お父さんが働いてくれたら良いんだけど。」
私の姿を見せつけるように働き続けた。
「おはよう。」
隠しても隠しきれない程に目は腫れていて、まだ3歳くらいだった私は、その涙の理由をどこからか感じ取っていた。
「お父さん、お仕事行ったの?」
「そうだよ。」
母の頭を撫でると、自然と涙が溢れて来る。大好きなお母さん、大好きなお父さん。でも、お母さんを泣かす…大嫌いなお父さん。
「かなしいねぇ。かなしいねぇ。」
気がつくと泣き疲れて、また私は眠っていた。そんな毎日が私の日課とも言えた。目が覚めると、母の目も元に戻っていて、私もすっかり元気いっぱいになっている。すっかり忘れてしまったかのように。
【毎日続く夢】
そう思えた。
15歳の誕生日の日。
「会社辞めたんだ。」
遅く帰って来た父の部屋から漏れるように聞えて来た言葉。
「明日からどうするの?」
母の強い声がする。
「どうにかするよ、どうにでもなるんだ!先輩が来ないかって言ってくれているんだ。心配しなくて良いから!」
それ以上に強い声がする。酔っているのは口調でわかった。いつものように父は酒に酔っていて、都合の悪いことには怒鳴り散らし、次の日には忘れていた。
転職したかと思えば、数か月で大きな荷物を抱えて帰ってくる。そんなことが何年も続いた。何も聞かなくても、また会社を辞めたのかとわかるようになった。その間も母は働き続けた。そして私も、高校生になってから毎日毎日学校が終わってからバイトへ出かけた。
「お父さんが働いてくれたら良いんだけど。」
私の姿を見せつけるように働き続けた。