彼の瞳に捕まりました!


「どうしても?」

「はい」

「僕のどこがだめ?」

「どこが……って言われると、困ります」

「タイプじゃない?」

「私にはもったいないです。社長にはもっと素敵な方がいらっしゃいます」

「他に好きな男がいるとか?」

「……へ?」

社長の言葉にそれ以上の返事が出来なくなった。

他に好きな男……?

「あれ、違った?
じゃあ、好きな男はいないんだ」

どこかふに落ちない、そんな表情を浮かべながらも社長は明るい声をだした。

「じゃあ、まだ僕にもチャンスはあるって事だよね?」

抱きしめていた腕の力を再び強くすると、社長は私の耳元に唇を寄せた。

「僕を好きになってもらうから」

「えっ?」

「菜穂は絶対に僕を好きになるよ」

自信たっぷりな言葉に、返事ができない。

「難しい事考えずに、僕を好きになって」

甘い声で言葉を続ける。

「ごめん、なさい」

振り絞るように出した言葉。
その言葉に社長の腕の力が抜けた。


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