彼の瞳に捕まりました!


「そりゃ、そうだろうけど……」

木村さんはそれ以上の言葉を発する事はなかったけれど、何か言いたげな眼差しを向けて自分のデスクへと戻って行った。

その背中を見つめてはため息が漏れた。

私はなんで自分にいちいち言い聞かせなければいけないんだろう。

それじゃ、まるで私がーーー


その考えに至って、思わず頭をぶんぶんと振った。

だって、あり得ないじゃない。

そんなのあり得ないよ……


高瀬にそんな感情、あり得ないって……

何度も何度も頭を振って、
大きなため息をつくと、デスクに無造作に置いておいた携帯を手に立ち上がった。

そのまま、廊下の端まで移動すると、さっきまで一緒にいた彼に電話をかけた。
誰でもいいから―――

違う。

彼なら、あきれたような顔をしながらもきっと話を聞いてくれるから。

そう思って、電話から聞こえるコール音を数えていた。


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