彼の瞳に捕まりました!


10回以上コール音が鳴ってそろそろ留守電に切り替わりそうな時、少しだけ怒ったような声が聞こえた。

「何?」

私の名前を聞くこともなく、電話に出た彼に苦笑いして、謝罪の言葉を告げた。

「ごめん、忙しいよね」

「あたりまえじゃない。もう、何よ?」

さっきまでの刺々しさがなくなったマサル君に、先ほどの約束の時間を告げる。
マサル君は、勝手に決めないでよね。なんて言いながらも待ち合わせの場所を告げて、慌ただしく電話を切った。

本当に忙しかったみたいで、今更ながら申し訳なさがこみ上げてきて、ごめんねとぼそっと呟くと、両手を上に伸ばした。

ちゃんと聞いてもらおう。
自分の気持ち。
自分でもわからない、このどうしようもなくもやもやとしたものを……

そう言えば、こんな風に誰かに自分の気持ちを話す事今までなかったかもしれないな。
なんて思いながら、両手を勢いよく下ろした。






< 122 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop